龍田龍也展
TATSUTA Tatsuya
2018.10.29(mon) - 11.3(sat) ギャラリーなつか
“空刻空彩” A castle of debris
デブリの城
太陽光を創作のエネルギーとして8年になる。今夏は天候に恵まれ楽しい気分で仕事に励んだ。夏には強いと自負していたが、ここまで気温が高い日が続くと体力も限界に近づいた。ただ、好天がいつまでも続くとは限らない、もう一日頑張ろうという気持ちが身を奮い立たせる。
70歳を過ぎても夏が来ると夏休みの宿題を思い出す。図画工作もその一つである。小学4、5年生であったろうか、木の貯金箱を作ったことを思い出す。そんなこんなで今夏の作品作りは古新聞を素材に決めた。もちろん、太陽光を利用してのことである。お盆を過ぎても実験の連続で、時々面白味も顔を出すが、手応えは感じられないままである。宿題の提出日は10月下旬である。それまでに間に合うだろうかと頭を悩ませている。木の貯金箱を作っていた頃が恨めしい。亡き父は大工をしていたのである。
“デブリの城”とは、エントロピー増大の概念を踏まえ、我が身の衰えがいや増す今日この頃、気丈に身構えている私の気分でもある。東日本大震災を経験し、地球温暖化による気候変動、また世界政治情勢の大きな変わり目、人工知能の発展による社会変革、日本においても少子高齢化等々の不安が追い打ちをかける。身はデブリ化しても心は気高く城のようでありたいと願いつつ…(現実は遠く及び難いが)。
さて、私の現在の創作は主に太陽光エネルギーを利用しているが、太陽光を利用できない時は、発泡スチロールの作品を継続して作っている。東京でも『re-monad』と題し発表しました。ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツのモナドロジーにおけるモナドを私なりに解釈し直し、私の作品作りの基本としている。画家が一筆一筆を基本として画面を作り上げるように、また彫刻家の鑿の一削り一削りが、詩人の一文字一文字、作曲家の音階さながらである。発泡スチロールは変幻自在に形作りができ、温度によっても(プロパンガスを利用)多様な質感を出せることが面白いのである。今回も6点展示する。
他、小品の空刻空彩石(太陽光を利用し高温で石と金属を融合させ、発色させたもので私の造語)等々を展示する。多種多様な素材並びに作品を展示し、焦点が惚けるところは私の気質によるところとご勘弁ください。