阿部智子展
ABE Tomoko
2022.7.8(fri) - 7.16(sat) ギャラリーなつか
絵画は異なった世界との境界(中空)に出現する。例えば情報社会と現実の社会のはざまにおいて、絵画は伝達や交換を繰り返している。しかしその場面で、交換についての瑕疵への危惧が生じてきた。
ゲノム編集という技術が、重要なトピックとされる。人間の遺伝子情報のスパイラルに切り込みをいれる。その結果デザイナーズベビーが誕生する時代が来るかもしれない。母親は見えない情報の世界に取り込まれる危険に晒される。情報の交換は恣意的になり、一方的になる。そのときには母性本能という防護柵さえ無効となる事態が生じかねない。
展示は朝顔(protective shelf)が全体のモチーフとなる。工事作業の安全柵も朝顔と呼ばれている。情報が一人歩きする時代に、母性本能は歪むことなないだろうか。朝顔は月を見ることができない。ただ「月は綺麗ですか」と、問いかけることしかできない。
激しいスピードで進化する情報社会に恐れを抱きながら、絵画をその間(はざま)に浮かべる。この問題にスポットを当てながら、絵画の本質である交換の役割を、布素材の特性を生かし、重ね、透かし、両面を感じながら、追求してゆく。