母袋俊也展

MOTAI Toshiya

2025.2.8(sat) - 2.22(sat) ギャラリーなつか&Cross View Arts 日曜休廊

「M767《TA・ENTSUUJI》
アクリル、油彩/板
180×630cm
2024

「プランドローイング」
38.3×56.4cm
2024年

《TA・ENTSUUJI》-〈TA〉系 円通寺 再試行 1999→2024 —

僕、母袋俊也は「絵画におけるフォーマート(画面の縦横比)と精神性」との相関をメインテーマに制作展開してきている。それは〈TA〉系、〈Qf〉系、〈奇数連結〉〈バーティカル〉などの系列として展開してきた。
そして21世紀も四半世紀を終えようとする今、近代以降のある到達点としての20世紀の延長上にはないことを改めて強く実感させられるのだが、それへの回答として新シリーズ構想の模索に入っているところである。 一方、今まで探究してきたそれぞれの系列の纏め、やり残しの取り組みとして、同一テーマを新作として制作、あるいは完成作をオーバーペインティングとして大きく加筆していく方法で各系列の纏め仕事を進めている。

今回は〈TA〉系の同一テーマでの新作の発表である。1999年に描いた《TA・ENTJI》の新作として制作される《TA・ENTSUUJI》の発表であり、展覧会タイトル副題「〈TA〉系 円通寺 再試行 1999→2024 」はそれを示している。

横長フォーマート、偶数連結、余白が横に反復される〈TA〉系の多くは、風景をモデルとするが、出品作《TA・ENTSUUJI》は京都 円通寺の比叡山を借景とする書割り的空間をモデルとしている。
円通寺の室内から庭を眺めると背後に比叡山が柔らかいラインをつくり横たわっている。

暗い室内に正座、強い光の借景庭園の外界を見ると、室内の黒い柱と呼応するように庭を隔てる生け垣に垂直に立つ檜、さらに庭外の檜へと垂直の柱は後退していくかのようにも見える。
そして生け垣、藪、竹林などが直行する視線と交差する書割りの様に平らな薄面が幾重にも重なり、徐々に退いていくように感じられ、絵画の平面性と正面性を強く意識させるのだった。
1999年円通寺の借景空間をモデルに描いた《TA・ENTJI》は、普遍を求めようとするからか具体的形象性を抑制、抽象性高い画面の成り立ちを示していた。その横長フォーマート180×630㎝(10枚組)は4枚目と5枚目を境とし、画廊空間2面の壁面に屈曲展示が試みられた。当時銀座にギャラリーなつか があった時代のことだ。

そして本展では、改めて円通寺に取材。
視覚体験を重ね、同一フォーマートを8枚組に改編、タイトルも8枚組に合わせて8文字《TA・ENTSUUJI》と改名、再び新作での屈曲展示を京橋に移ったギャラリーなつか の空間で試みることになる。同一空間ではプランドローイングを展示。
別室では1999年のインスタレーション写真など資料も開陳する。
※本展は長野県立美術館 「信州50年」 展で最終章「平面からの逸脱— 絵画平面から空間へ意識の拡大」でも屈曲展示の関連展示として企画された。