三上秀夫展
MIKAMI Hideo
2019.11.18(mon) - 11.23(sat) ギャラリーなつか
同一平面上の奥行きについて
The Coplanar Depth
作品制作で、私が着手してきたことは、「同一平面上」に図形を配置することであった。図形を「上・下」「左・右」の関係だけで構成することに専念し、図形が「手前だから大きい」「遠くだから小さい」という遠近法は採用しなかった。また、図形間の重なりを避けることで、手前の図形で奥の図形が隠れないようにした。しかし、図形の色や形に意識を向けると、あるものが「図」として前進し、それ以外が「背景」として後退する。別の色や形に意識を移すと、「図」と「背景」の関係が入れ替わり、新たな奥行きが生まれる。色や形は、鑑賞者の意識にのぼった瞬間に「三次元的奥行き」を生じ、当初の計画である「同一平面上」での図形の配置が不可能となる。人が平面に何かを描くということは奥行きで仕事をすることであり、実際には、現実空間を思考しているのである。それゆえ、平面作品を奥行きのともなわないものとして思考することは不可能なのであろう。私はこの問題に対して制作の都合上、主題を“同一平面上の図形の配置”から“同一平面上の色彩分割”に変更することで、その場を切り抜けようと考えた。それと平行して用いた苦肉の策が、イリュージョンの活用であった。そもそも絵画における「イリュージョン」とは、二次元的平面に描かれたものが三次元的奥行きを持ち、空間として存在しているかのように見なされる視覚効果をいう。私は、平面に描かれた奥行きに対して同じイリュージョンを逆向きに用いることで、奥行きを打ち消そうと考えた。その操作で生じたものを「二次元的イリュージョン」と名付け、本来の「イリュージョン」とは一応、区別した。ここでは、二次元的イリュージョンを、平面における「本来の非空間性」を取り戻すための、ひとつの手段として位置づけたい。