大気と萌芽

釘町一恵・高橋敬子

2021.5.24(mon) - 6.5(sat) ギャラリーなつか 日曜休廊

「蘇る夢」
キャンバスに油彩
F20
2020

「風に呼ばれて」
キャンバスに油彩
F20号
2020

釘町一恵 KUGIMACHI Kazue

≪Aula 2021 ― ひよめきと共に≫

絶え間なくいつも背中に張りついている、この命題。
Eros ― Thanatos
終わらない綱引き。
共に在る、在り続けることは喜びのはずなのに、冷たい畏れも抱く。
巡る季節の中で思う。
早く彼の元へ還りたい、否まだここに留まりたい。
散っていった花の溢れる香りを嗅ぎ、
体に浸み渡る光を、まだ浴び続けていたい。
それでもまた後ろから抱き寄せる誘い ― Thanatos、Eros。
自縄自縛はいつか解ける。
死に続け生き続けるこのひとときは、
ひよめきと共に与えられたギフトなのだから。

2021 年 5 月へ  釘町一恵
                         

開催記録

「四月 – 芽吹き 1」
綿布にアクリル、墨、パステル、色鉛筆
H60.6×W72.7cm
2020
撮影:川上弘美

「四月 – 芽吹き drawing 1」
アルシュ紙にアクリル、墨、パステル、色鉛筆
H12×W12cm
2020
撮影:川上弘美

高橋敬子 TAKAHASHI Keiko

2020年4月、

裏庭を散策していると、明るい午後の陽に透明な黄緑色に光る無花果の新芽に出会った。

ポッと灯のともったような輝きに励まされ、一年が過ぎた。

洗面所にはいつも緋色のゼラニウムの鉢があった。

スカーレット、日常の中に秘められた情熱の芽。

another mother

その色は、私にとってもう一人の母。

そして再びの春、

あたたかな光に満ちた野の道を、何の屈託もなく歩いた日々は訪れるだろうか。

私たちが手の動きを止めない限り、

森の中の明るい空き地のように小さな光を輝かせて、

それはきっとそこにある。

 

2021.4月       高橋 敬子

開催記録