大気と萌芽
釘町一恵・高橋敬子
2021.5.24(mon) - 6.5(sat) ギャラリーなつか 日曜休廊
釘町一恵 KUGIMACHI Kazue
≪Aula 2021 ― ひよめきと共に≫
絶え間なくいつも背中に張りついている、この命題。
Eros ― Thanatos
終わらない綱引き。
共に在る、在り続けることは喜びのはずなのに、冷たい畏れも抱く。
巡る季節の中で思う。
早く彼の元へ還りたい、否まだここに留まりたい。
散っていった花の溢れる香りを嗅ぎ、
体に浸み渡る光を、まだ浴び続けていたい。
それでもまた後ろから抱き寄せる誘い ― Thanatos、Eros。
自縄自縛はいつか解ける。
死に続け生き続けるこのひとときは、
ひよめきと共に与えられたギフトなのだから。
2021 年 5 月へ 釘町一恵
開催記録
高橋敬子 TAKAHASHI Keiko
2020年4月、
裏庭を散策していると、明るい午後の陽に透明な黄緑色に光る無花果の新芽に出会った。
ポッと灯のともったような輝きに励まされ、一年が過ぎた。
洗面所にはいつも緋色のゼラニウムの鉢があった。
スカーレット、日常の中に秘められた情熱の芽。
another mother
その色は、私にとってもう一人の母。
そして再びの春、
あたたかな光に満ちた野の道を、何の屈託もなく歩いた日々は訪れるだろうか。
私たちが手の動きを止めない限り、
森の中の明るい空き地のように小さな光を輝かせて、
それはきっとそこにある。
2021.4月 高橋 敬子